次女すいちゃんは38週とやや早く生まれたため、成長が心配されたが、2カップ大きくなった妻のおっぱいのおかげで、すくすくと育っていた。
ある日、妻からよなクリ(筆者の病院)に電話がかかってきた。「すいちゃんのお股にビー玉みたいなものがあるんだけど」早速診察してみると、プ二プ二した塊がお腹に触れた。「鼠径ヘルニアだ!」
鼠径ヘルニアは、いわゆる脱腸のことで、筋肉と筋肉の隙間から腸がはみ出してくる病気だ。以外に怖い病気で、出てきた町が鬱血して腐ったり、女児の場合は卵巣が一緒に出てきてしまうこともある。
自然に治ることもあるが、一般的には手術が必要だ。しかし、体が小さいと手術が難しいため、すぐ手術というわけにはいかない。手術ができるくらい体が育つまでは、ヘルニアがでてくるたびにお腹の中に戻し、難をしのぐ必要がある。私がそばにいない時は妻がするしかない。
「簡単だから大丈夫。家でこうなったら君が戻すんだよ。任せた!」軽くお願いしてみたが、妻は青ざめていた。妻は医療関係者だが、検査技師のため専門が違う。こういったことは苦手だ、というよりも勉強をしたことがないはずだ。意地悪を言うのはやめた。ヘルニアが出た際は、いつでもよなクリに連れてきてよいことにした。
それから妻のよなクリ通いが始まった。今日も明日も明後日もやってくる。いい加減に慣れてほしい。だが、心配なのだろう。インターネットで検索すると恐いことばかり書いていある。実際、腸が腐り、緊急手術になった事例もある。
その後、心配しながら経過を見ていたが、幸い成長とともに、ヘルニアは顔をださなくなってきた。体が大きくなり、筋肉の隙間がうまったのだろうか。
パパとしては、手術はできるだけしてほしくない。女の子ならなおさらだ。このまま自然に治ってしまえばいいのに。そう願うばかりだ。
2014年1月22日 日本海新聞掲載