米子こどもクリニックを開業し2年になる。開業当初を振り返ってみると、自分には勢いがあった。新しい環境に飛び出すには、自信と勇気、そして勢いが必要だったのだ。
しかし、しばらくすると、その勢いはいい意味でも、悪い意味でも落ち着いていった。熱が冷めると、周りに目がいくためか、他人の評価が気になりだした。私は認められているのか、批判されているのか、それとも相手にされていないのか。
私はクリニックだけではなく、Dr.YUBI、そして田本直弘として音楽活動をしている。kぉの点も踏まえ、自分を客観的に評価するため、インターネットで自分を検索してみた。すると、いろいろと引っかかってきた。まずは、私にいい評価をしているものを見つけた。いい先生だとか、歌が良かったと書かれていた。とてもうれしく、心が躍った。
しかし、少し潜っていくと、批判的な内容が多くなってきた。ヤブじゃないの?歌、下手だしやめればいいのに…。私はひどく落ち込んだ。読まなきゃよかった。良い評価と悪い評価をうまく消化できなかった私は、悪い評価ばかりに目を向けるようになっていった。
そして無限地獄にはまった。他人の評価から、それを改善する。すると、また他人の評価が気になる。この無限ループにはまり、いつからか、私は他人の評価ばかりを気にするようになった。
自分の考えや意見、信じる道はどこかへ消えてしまった。これではいけない。しかし、私は弱い人間だ。わかっていても、自力でこの無限ループから抜け出すのは難しかった。そこで、逃げることにした。現実から目をそらしたのだ。
すると、誰かと目が合った。それは、診察室の患者さん、ライブに来てくれているお客さんだった。私ははっとした。これまでどこを見ていたんだろう。目の前に、そのままの私を必要としてくれている人がいたのだ。私は、自信を持って、そして勇気を持って、今を生きていくことにした。
2014年8月23日 日本海新聞掲載