米子こどもクリニックは「全ての子どもとその家族の幸福のために」を理念に、外来診療を中心に医療を行っているが、診療以外に時間を割かれることも多い。土日は学会に出席したり、月末はレセプトに追われる。その他の雑務もいろいろとある。医療技術向上のための時間は有意義だが、事務仕事は効率的に時間をかけずにしたい。
こういったことを考えると、診療時間以外、近道ばかりを探している自分に気付く。キーボードが早く打てるようになったり、書類に目を通すスピードが上がるのは歓迎だが、家族との時間に効率を求めている自分にも気付く。
私は家族と過ごす時間を大切にしているつもりだ。子どもと遊ぶ時間も確保している。しかし、日中遊んでも夕方から仕事に出かけたり、子どもたちを寝かしつけてから、夜中に働くこともある。寝る前に、子ども達に「今日はずっと横で寝ていてくれる?」と聞かれて、「うん」と言ってあげられないのは心苦しい。
私は子ども達にこう効いてみた。「パパ、みんなずっと一緒にいたいから、明日お仕事休んでもいい?」すると、「パパが休むと病気の人が困っちゃうから、お仕事休んじゃだめ」とのこと。「それなら、働きにでてもOKだよね」子どもたちはうなずいたが、その目は寂しそうだった。
長女と自転車でさんぽに行ったことがある。乗れるようになったばかりの自転車をうれしそうにこいでいるが、まだふらつくため、近所をぐるっと回るだけだ。しかし、交差点にくると、娘はやたらと遠回りの方を選ぶ。自転車にもっと乗っていたいのかなぁと思っていると、疲れた、疲れたと文句が出る。言っていることと、やっていることが矛盾している。
疲れているなら早く帰ろうよと提案するが、頷かない。どうも娘は、私と一緒にいる時間を長くしたいため、遠回りを選んでいたようだ。近道だけではなく、たまには遠回りも必要なのかなぁ…。何気ない事だが、私は娘に考えさせられた。
2014年10月22日 日本海新聞掲載